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講義3.3 コンセプチュアル思考のスキル[3]類推 15分解説&ワーク

  • 5 日前
  • 読了時間: 6分
類推はつかんだ本質を押し広げていくこと

コンセプチュアル思考の基本スキルとして3番目に紹介するのは「類推」です。類推とは、物事Aと物事Bの間に類似性を見出し、その似ている点をもとにして何かをおしはかることです。論理用語では「アナロジー」と言います。


私たちは生きていくうえで、未知のことへの試みを避けるわけにはいきません。そのときに類推という思考はとても大切なものです。物事Aで引き出した本質を物事Bに共通性として適用することができれば、リスクを減らしながら、成功確率を上げることができるからです。



類推という思考のはたらきが生み出すものとして寓話をあげることができます。寓話というのは人生の教訓をいろいろに含んでいます。例えばイソップ物語の1つ『北風と太陽』。左スライドのように、寓話から引き出す本質的メッセージを共通性として、生活や仕事、社会にいろいろと当てはめることができます。


そしてこの類推における思考の流れも、コンセプチュアル思考の基本の流れである「π(パイ)の字思考プロセス」とみることができます。



同様に、ケーススタディ学習も類推です。新聞をざっとながめていて、自分がかかわる業界とはまったく縁遠い業界の会社がある工夫をして見事な成功を収めたという事例に接します。その成功要因を探っていくと、「あ、これって自社にも共通に有効かもしれない。応用してみよう」とひらめくときがあります。



また、ロールモデルから学ぶのも類推です。ロールモデル(role model)とは「その役割を果たす模範的な存在」をいいます。「あの人のようになりたい」と思い、その人の行動や考え方から模範要素を引き抜き、それを真似ることは自分を成長させる効果的な方法の1つです。


加えて、ロールモデルを持つことによって行動のヒントを得るだけでなく、彼/彼女から情熱ももらえるかもしれません。情熱は伝染するからです。



このように世の中の事象は、そこから何かを引き出そうとする思考態度をもってながめれば、いろいろとヒントを明かしてくれるものです。


ですから、この世界を漫然と見過ごすのではなく、「この現象の奥にある基本原理は何だろう」「この出来事は本質的にどう自分とつながっているのだろう」「この事例から何を教訓として引き出せばいいのだろう」といった類推という名の思考態度をつくることが重要です。




喩えることでこそゆたかに深く伝わる内容がある

類推は、比喩や寓話、象徴といった表現形式を生み出します。私たちは現実生活のなかでじつに多くの見聞、経験、観察、思考などを積み重ねるわけですが、そこから何かしら本質的なものをつかむようになります。そのつかんだものを外に発するとき、直接的に言うのではなく、示唆的に伝えたいという動機が起こります。そこで用いられるのが、比喩や寓話、象徴(シンボルマーク)といったものになります。



比喩や寓話、象徴は言ってみれば、伝え手がつかんでいる本質的内容を一見変わった外形をしたカプセルに忍ばせて相手に伝えようとする試みです。


どのようなカプセルを使い、また、どのように忍ばせるかは、伝え手側の表現力のゆたかさによります。奥深い示唆表現ができあがることもあれば、陳腐な示唆表現になってしまうこともあります。



同時に、比喩や寓話、象徴といった表現が差し出されたとき、受け手も読解力を問われます。受け手からみえるのは、外側のカプセルだけです。伝え手が内に忍ばせた本質的内容は直接的にはみえません。比喩や寓話、象徴からどれだけゆたかにメッセージを読み取れるかは受け手側の力量によります。


そのように、類推という思考力を鍛えることは、比喩や寓話、象徴などの表現を使ううえでも、読み取るうえでも重要なことになります。




比喩表現には、直喩、隠喩、換喩、提喩などいろいろな種類があります。そのなかでもここではとくに、隠喩を取り上げます。


隠喩とは、ある物事を説明するのに「~のようだ、~みたいだ」と直接的に言わずに、他に類似するものを借りてきて代用し、その特性や本質を表す方法です。英語では「メタファー|metapfor」といいます。古今東西の古典には、このメタファー(隠喩)づかいにすぐれたものがたくさんあります。


例えば、マキアヴェッリの『君主論』に出てくる「獅子と狐」。君主となるべき人間には、獅子的な素質と狐的な素質の両方が必要だという主張です。獅子と狐を持ち出してくる感覚と慧眼はすばらしいものがあります。


また、古代ローマ時代の詩人ユウェナリスが『風刺詩』で用いたのは、「パンとサーカス」でした。これも現代に通じる普遍的で奥深い比喩ではないでしょうか。




思考ワークチャレンジ ~たとえ話づくり「●と□」

では、コンセプチュアル思考ワークに挑戦してみてください。私が研修やワークショップで行っているのが、たとえ話づくりです。あなたがつかんでいる本質的内容を自分独自の比喩に変換して伝える作業です。


イソップ物語の『ウサギとカメ』『北風と太陽』は、たとえ話の名作です。さきほど紹介した『獅子と狐』『パンとサーカス』も卓越したメタファーです。これらはいずれも、2つのものを対比させながら生き方や社会のありようを人びとに考えさせる内容です。比喩を用いるからこそ、奥の深い伝達となっています。 さて、あなたはどんなメタファーを繰り出して、世の中の本質を人びとに伝えられるでしょうか。


【ワーク作業】

下のワークシートを使用します。

あなた独自のたとえ話を創作してください。

 ・「●と□」のように2つのものを取り上げ、対比させる形とします

 ・何か教訓的なメッセージを物語にすることでもいいですし、世の中のありよう

  を2つの概念でとらえ解説する内容でもいいでしょう。




では、実際のワークショップでどんな答えが出てきたか、いくつか紹介しておきましょう。「概念工作塾」は私が主宰するコンセプチュアル思考のオンライン道場です。そこの受講者たちが考えてくれたたとえ話です。





ビジネスの現場において、やりとりされる言葉は、的確かつ簡潔、直接的であることが求められます。しかし、それだけに偏重してしまっていいのかという反省も生まれます。


仕事の意味や価値、事業を通して顧客や社会に届けたい理念や意義。そうした想いや志は、既存の言葉では表しきれない奥行きや深さや高さがあり、熱があり、味わいがあり、にじみがある。ひとたびありきたりの言葉で手短に直接的に表してしまうと陳腐化したりもする。そうしたときに、比喩で考え、比喩で伝えるということは有効な手立てになります。


実際、比喩的なメッセージ発信にすぐれた人・企業は、他者や顧客とのコミュニケーションにおいて、共感ベースで信頼や絆をつくることがうまい。比喩によってじんわりと包含される本質的価値が人を結びつけるからです。

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