

講義1.1 コンセプチュアル思考の系譜
◆時代はつねに新しい思考方法論を要請する
思考は人間の奥深い能力です。そして人間は思考について思考することをやめません。古くより「帰納法・演繹法」といった論理的な思考法が編み出され、さらにそこに科学哲学者チャールズ・パースは「アブダクション」という第三の方法を加えました。また、発明家エドワード・デボノは「垂直思考と水平思考」を唱え、その思考分類は世界に大きな影響を与えました。そのほかにも「右脳思考/左脳思考」、「ブレーンストーミング」「(川喜田二郎による)KJ法」「マインドマップ」など、思考を切り取る新しい概念や方法論、フレームワークは次々と生まれています。 そしてこれらのものをビジネス現場は積極的に取り込んできました。「ロジカル・シンキング(論理的思考)」や「クリティカル・シンキング(批判的思考)」は、学術的な世界の思考法をビジネスパーソン向けに展開したものです。複雑な事象を前に、データを分析し、仮説を立てて検証していく。そして論理を組み立てて、真理を追究し、客観的に説明をする。その思考は、まさにビジネス現場が求めているものと親和性がありま


【お知らせ】ワークショップ第1弾を5月に開催します!
『コンセプチュアル思考の教室』オープンにあたり、大手出版社ディスカヴァー・トゥエンティワン様のご協力を得て下記イベントを開催するはこびとなりました。
◆イベント名: Discover Book College ワークショップ編 仕事に価値を キャリアに軸を与える
『コンセプチュアル思考』ワークショップ ◆講師:
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表 村山昇 ◆開催日:
〈第1回〉 2016年5月11日(水)19:00‐21:00 開場時間:18:30
「概念化して」みよう ~ものごとを定義すると自分なりの軸ができる 〈第2回〉 2016年5月25日(水)19:00‐21:00 開場時間:18:30
「モデル化して」みよう ~ものごとの仕組みを一枚の図でとらえる *各回とも単独で完結する内容ですが、セットで参加されるとより理解が深まります。受講テキスト付き。 ◆参加料金(税込み):
〈第1回のみ参加〉事前払い:2,500円| 当日現金払い:3,000円
〈第2回のみ参加〉事前払い:2,500円 |当日現金払い:3,0

講義1.7 コンセプチュアル思考の定義
ここであらためて、「コンセプチュアル思考」の定義、思考スタンス、骨格となる思考フロー、基本となる思考スキルをまとめておきます。とくに5つの基本スキルについてはこれまで触れていませんが、第2部の実践ワーク編で順次説明していきたいと思います。 〈コンセプチュアル思考の定義〉
繰り返し述べますが「コンセプチュアル思考」についての一般的な定義はまだありません。本サイト『コンセプチュアル思考の教室』なりに表現するとこうなるでしょうか。 〈4つのスタンス〉
コンセプチュアル思考の構えは次のようなものです。 〈3つのフロー〉
コンセプチュアル思考の骨格となるのは、「π(パイ)の字」思考プロセスと呼ぶ次の3つの流れ。 〈5つのスキル〉
コンセプチュアル思考の基本的技術は次の5つ。 1番目の「定義化」は、端的に言うと「〇〇とは■■■である」と表わすことです。 例えば、あなたは「仕事とは■■■である」「事業とは■■■である」「成功とは■■■である」「幸福とは■■■である」「成功と幸福の違いは■■■である」……といった形式で、ものごとについて自分なりの簡潔な

講義1.6 概念・観念・信念・理念
◆人それぞれのコンセプト
「コンセプト」や「概念」について、ミニワークを通して理解を進めていきましょう。 〈ミニワーク〉
「事業」を下の形式で自分の言葉で定義せよ。
───事業とは「〇〇〇」である。 ビジネス社会に生きる私たちにとって、「事業」とは当たり前すぎるほどの言葉ですが、いざ定義するとなるとけっこう難しいかもしれません。まず、頭の中で事業のいろいろな場面や形式、実態などを思い浮かべてください。そして本質の部分に入り込んでいき、そこから何を抽象してくるかです。そして抽象したことを言葉に落とす。さて、あなたは事業をどう定義するでしょう。 例えば、一般的定義の代表として『広辞苑〈第六版〉』の表記はこうです。 〇事業とは「一定の目的と計画とに基づいて経営する経済的活動」である なるほど、とても客観的な説明となっています。ちなみに、経営学者として著名なピーター・ドラッカーは─── 「事業とは、市場において知識という資源を経済価値に転換するプロセスである」 (『創造する経営者』より) と定義しました。彼独自の言い回しによる鋭い説明になっていま

講義1.5 「コンセプト|concept」とは何か?
◆抽象によってとらえた内容―――それが「コンセプト」
その物事が何であるかを考えるとき、そこから要素を引き抜く形が抽象化ということでした。その抽象によって「とらえた内容」――そこには、本質的なことやおおもとの「一」なること、いくつかの物事を括る共通性などが含まれていました――をここでは「コンセプト|concept」と呼ぶことにします。 conceptという英単語は、強調の接頭語「con-」に語根「cept」が付いた形です。ceptは語根「ceive=つかむ・受け取る」の名詞形です。したがって、conceptは「しっかりとつかんだもの・内容(そして自分の中に取り込んだもの・内容)」がおおもとのニュアンスです。 同じ語根を持つ単語にperceptがありますが、これは「(感覚器官による)知覚」です。conceptはこの知覚したことを、さらにそれが何であるかという理解や解釈、構成にまで進めるはたらきです。一般的には「概念」という訳語が与えられています。ちなみに、このconceptには「受胎」という意味もあります。たしかに、語根が「つかむ・受け取る」で