講義2.2.1 モデル化のための図的表現
コンセプチュアル思考は、物事を概括することが目的です。この連続講義では、まず基本スキル1として「定義化」をみてきました。これは物事の本質を短い言葉に凝縮して表現するものでした。そして2番目の基本スキルが「モデル化」です。
モデル(model)とは「模型=実物を模して形にしたもの」です。男の子はよくプラモデルを作って遊びますが、あれは例えば複雑なつくりの実物の飛行機があって、その構造を単純化しプラスチック製で縮小したものです。それと同じように、概念のモデル化は、物事の仕組みを単純化して構造や関係性を表現する手立てです。
「コンセプチュアル思考」ではモデル化のための図的表現を9種類の方法に分けて整理していますが、本稿では、その1番目「根源的要素をあげる」の中から4つ紹介したいと思います。
1-1【並列図】 その物事の根源となる要素を探り出し、それらを単純に並べる形です。例えば、古代の認識では、世界を成り立たせている元素を「池・水・火・風・空」の5つとみます。これら5大要素は互いに性質が混ざり合うことはないので、図としては並べるだけになります。
1-2【ベン図】 要素間に包含関係がある場合は、ベン図と表現をとります。例えば、「心・技・体」の場合、3つの要素は完全に分離できず、境があいまいで融合している部分があります。そのような場合は、ベン図の重なり具合で概念特性を表わすのが適当です。
1-3【階調図】 要素の関係度合いが諧調的に変わることを表わすには階調図を用いるのがいいでしょう。二元的に物事をとらえる場合、その二元の表れ方はたいてい白か黒かというデジタルなものではなく、白からじょじょに黒へ移っていくという階調(グラデーション)的なものになるときが多々あります。
図例は、意思疎通という概念を理解するための図で、「コンテクスト(context)」と「コンテンツ(contents)」という二元の組み合わせで表現したものです。「高/低コンテクスト文化」という概念は、米国の文化人類学者エドワード・ホールが『文化を超えて』で提唱しました。
1-4【不二図】 2つの根源Aと根源Bが相互に影響し合い、究極は一体(=不二、一如)であることを示す場合には、こうした古代中国の思想で用いられた「太極図」のような図を用います。二元論で物事をとらえるとき、単に二元を分離対立させるよりも、絶対の立場から不二あるいは一如としてみると、より深い考察にいたる場合が多いものです。
例えば、「自己と環境(世界)」という2者の関係性も不二図でとらえられるのではないでしょうか。自己が環境をかたちづくり、環境もまた自己をかたちづくる。自己は環境をはらみ、環境もまた自己をはらむ。
「コンセプチュアル思考」は、こうした概念的イメージを豊かにたくましくする思考でもあります。