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講義1.2 「π(パイ)の字思考プロセス」抽象化→概念化→具体化

◆雑多な事象・経験の中から本質を抜き出す=「抽象」 コンセプチュアル思考は、「コンセプチュアル=概念的な」という語が示すとおり、中軸は概念化の思考です。それがどんなものかイメージしていただくために、一つ簡単なワークを紹介しましょう。

コンセプチュアルワーク:「成長とは何か」を考える

〈作業1〉 これまでの仕事経験のなかで、「自分が成長できたな」と思える出来事・エピソードをいくつかあげてみましょう 〈作業2〉 「成長とは何か」「成長についての解釈」を自分なりの言葉で表わすとどうなるでしょう

まず、これまで遭遇してきた雑多な出来事を振り返り、自分を成長させてくれた経験を見つめなおす。そしてその経験から本質的なことを引き出して、成長とは何かを短い文言に凝縮する。この作業1→作業2の思考の流れがいわゆる「抽象化」です。ちなみに、どういった回答が出てくるかといえば次のようなものです。

コンセプチュアル思考がつくり出す答えはこのように多分に主観的です。コンセプチュアル思考は、サイエンスが目指すような論理的思考と違い、ある客観的な唯一無二の解を求める思考ではありません。「conceptual」のもとになっている動詞は「conceive」でした。この語は「つかむ・内に取り込む」という意味です。その物事が何であるかを人それぞれにつかんでいくことがコンセプチュアル思考です。ですから主観的でいっこうにかまわないのです。 しかし、そのときに客観を軽視するわけではありません。客観をくぐり抜けたところで表現される主観は、いやおうなしに分厚さや堅固さをもったものになるからです。

◆思考は具体的な行動に展開してこそ本望 そして次の作業に移ります。

〈作業3〉 作業2の定義をふまえて、「成長」を図や絵で表わしてみましょう

〈作業4〉 成長を持続的に起こすための「行動習慣」としてどのようなものが考えられますか。3つあげてみましょう。

作業3は概念化を深める流れです。言葉だけでなく、図的に概念を表わそうというものです。概念をビジュアル的に描くと、言葉の定義では表わしにくかった全体の構造や要素間の関係性が見えやすくなります。

作業4はこれまでの作業をふまえて、今後の自分への行動の具体的展開です。抽象化・概念化だけで終えてしまうと、頭の中だけの観念論で閉じてしまいます。思考は具体化され実践されることが重要です。

これら一連の作業が示すように、コンセプチュアル思考は大きく3つの思考の流れによってなされます。すなわち───

1)抽象化(引き抜く)    ↓ 2)概念化(とらえる)    ↓ 3)具体化(ひらく)

この思考の流れを私は、その形から「π(パイ)の字思考プロセス」と呼んでいます。これはコンセプチュアル思考の骨格ともいうべきもので、今後いくたびも出てきます。

◆成長「観」にかかわる思考 このコンセプチュアルワークはいわゆるあなたの成長「観」の分厚さを試すものです。観の分厚い人というのは、豊かな経験を持ち、そこから本質的なことを深く抜き、自分の言葉やイメージで独創的に表現ができます。そしてそれをもとに具体的な行動に展開することができます。ですから、もしこのワークをやってみて、成長経験がうまく思い出せない、成長をうまく定義できない、そして行動にも落としづらい、というのであれば、おそらく成長観が弱いのでしょう。 観というのはものごとの見方・とらえ方です。観は知識や技術よりも下層にあって、あなたの仕事・キャリアのあり方に大きく影響を及ぼします。「コンセプチュアル思考」はその観の醸成を促す思考とも言えます。

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